乳房の病気
女性のがんで最も多いのが乳がんです。
乳がんになる確率は14人に1人
がんを患っている女性のなかで一番多い部位は乳房で、2008年の1年間に乳がんと診断された人は5万人をゆうに超えました。乳がんになる人は急速に増えていて、14人に1人の確率で発症するというデータが出ています。しかし、乳がんで死亡する確率は、わずか1%。乳がんは治る病気なのです。ただし、検診を定期的に受けていなくて発見が遅れ、死亡する人が年々増加しているという現状もあります。
※出典:国立がん研究センターがん対策情報センター
心とカラダに効くはなし 乳がん
Q.乳がんは自覚症状でわかるのでは?
A.自覚症状がなく、周囲に転移しているケースもあります。
乳がんの自覚できる症状としては、乳房にしこりやひきつれができることが挙げられます。しかし、しこりなどの自覚症状が現れる前に、周りのリンパ節や骨、肺、肝臓、脳などの臓器に転移して見つかる場合もあります。乳がんの種類や性質はさまざまありますが、自覚症状のない早期がんの段階でも検診でほぼ見つかります。ですから、定期検診が重要なのです。
乳がんは乳房の外側上部に発生しやすいが、人によってさまざま
乳がん患者のうちの約半数が、乳腺が多い乳房の外側上部でがんが見つかっています。次いで多いのは乳房の内側上部で、外側下部、内側下部、乳輪部と続きます。乳がんは乳房のどこにできてもおかしくありません。
Q.最近の手術の傾向は?
A.乳房を残す手術が増えています。
検診で早期に発見できれば、乳房を残す「乳房温存術」で対応することが可能。腫瘍とその周囲のみを切除し、見た目にも満足感が高い手術です。がんが広範囲に広がっている、または複数のしこりがさまざまな場所で発生している場合は、乳房を全部取り除く「乳房切除術」となります。
定期的に検診を受けることが大切
乳がんをわずらった人の年齢を見てみると、40~50歳が一番多くなっています。これはリスクが高い年齢であるということのほか、40代から乳がん検診を受ける人が多いという理由も考えられるでしょう。20代で発症する場合もあります。乳がんはほぼ検診で見つかりますので、できれば1年に1回、最低でも2年に1回は検診を受けてください。
視触診
まずはベッドに横になり、視触診からスタート。医師が左右の胸やわきの下を丁寧に触り、しこりがないかをチェックするのです。しこりが見つかった場合は、乳腺エコーやマンモグラフィでしこりの部分をより丁寧に検査します。
乳腺エコー
技師が胸やわきに超音波を伝わりやすくするためのゼリーを塗り、ゼリーを塗った部分に機械を当てれば、モニターにエコー(内部からの反射波)の画像が映し出されます。
マンモグラフィ
マンモグラフィとは、乳腺・乳房専用のレントゲン撮影のこと。機械に乳房を挟みながら圧迫して、上下方向と斜め方向から撮影することで、乳房全体を診ます。しこりにならないタイプの乳がんを見つけることも可能です。
わが国の厚労省は、乳がん検診には原則的にマンモグラフィ検査をおこなうとしていますが、30歳代で乳がん検診を希望される場合は超音波検査を適用します。ただし、マンモグラフィ検査と超音波検査のいずれか一方では確認できない種類の乳がんもあります。医師による視触診、マンモグラフィ検査、超音波検査を同時併用検診とすることががん発見率を高めます。
当院では2019年4月より、トモシンセシス機能付のマンモグラフィ機器を導入しています。
検診の最適な時期とは?
乳がん検診は、乳腺の張りが少ない生理終了~1週間目頃を目安に予約を取ることをオススメします。
セルフチェック
乳がんは自分で発見できるがん。習慣づけよう!
乳がんの約半数は乳房をチェックしてわかる“しこり”を見つけられます。
Step1 基本的な乳房の触り方
4本の指をそろえて、指の腹と助骨で乳房をはさむように触れ、「の」の字を書くように指を動かします。しこりや硬いこぶがないか、わきの下から乳首までチェックします。お風呂の時に石けんが付いた手で行いましょう。
Step2 仰向けに寝てチェック
調べる側の乳房の下に枕や座布団などを敷き、乳房が垂れずに胸の上で平均的に広がるようにし、上記の基本的な触り方でチェックします。最後にわきの下に手を入れてしこりがないか確認します。
Step3 鏡の前でチェック
腕を高く上げて、ひきつれ、くぼみがないか、乳首がへこんでいたり、湿疹やただれがないか、次に両腕を腰にあてて、同様に視察します。また乳首から分泌物がでないかつまんで調べます。
チェックをする頻度や、タイミングは?
生理開始から一週間後ぐらいに行うのがベスト。閉経後の人は毎月1回、自己検診日を決めて行いましょう。しこりを見つけた時には、がんは1cm以上になっていることが多いので、異常を感じたらためらわず専門医に相談しましょう。
また、サイズが大きくても触ってわからないものもあるので定期的な検診と併用しましょう。
世代別に適した検診を受けよう!
日本の女性の20人に1人がなるといわれている乳がん。早期発見・早期治療のため、定期的な検診がとても重要です。
年代や体質によって乳房の状態が異なるため、適した検査がそれぞれにあります。
そこで、年代ごとにおすすめの乳がん検診をご紹介します。早期発見のために、自分に合った検診を賢く選んでください。
Q.わたしは30代だから、検査は超音波だけでいいのでしょうか?
A.若い人は乳腺密度が高く、マンモグラフィ検査では乳がんを判別しにくい傾向にあるため、超音波が有効といわれています。しかし、体質には個人差があるので、できれば両方受けてもらうのがベストです。
- 20代
- 月1回 セルフチェック
- 血縁者に乳がんの人がいる場合は、マンモグラフィや超音波検査をするほか、医師に相談しましょう。
- 30代
- 月1回 セルフチェック
- 年1回 医師による視触診+乳腺エコー(超音波検査)
- 必要ならば マンモグラフィ
- 40代~50代
- この年代がピークです!
- 月1回 セルフチェック
- 年1回 医師による視触診+乳腺エコー(超音波検査)
- 年1回 マンモグラフィ
- 60代
- 月1回 セルフチェック
- 2年に1回 医師による視触診+マンモグラフィ
- 現在のところ70代以上の日本人女性は、乳がんのリスクは少ない。
乳がんは、早期発見(がん1センチ以下)なら約90%完治します
日本では、乳がんにかかる女性は年々増えており、今では年間約4万人の女性がかかると推定されています。また亡くなる方も、ここ50年間で7倍近くに増えています。海外の乳がん検診の受診率は約80%~90%と高く、日本は約30%とまだまだ低いのが現状です。命はもちろんですが女性として自分を守るために検診はとても大事です。
要精査の診断を受けたら必ず精密検査を受けることが大切
乳がん検診の受診者の数%程度が“要精査”と診断され、精密検査の指示があります。しかし精密検査必要者の9割は良性所見、良性疾患※もしくは個人差のある正常乳腺です。
※良性疾患:多くは良性の石灰化、乳腺症、嚢胞、腺維線腫、乳管拡張症、腺腫などです。この中には外来フォローの対象となるものもあります。